韓国人の日本語探偵小説試論 - 金三圭「杭に立つたメス」 -
- Authors
- 유재진
- Issue Date
- 2014
- Publisher
- 한국일본학회
- Keywords
- 探偵小説、金三圭、植民地朝鮮、在朝日本人
- Citation
- 일본학보, no.98, pp.247 - 256
- Indexed
- KCI
- Journal Title
- 일본학보
- Number
- 98
- Start Page
- 247
- End Page
- 256
- URI
- https://scholar.korea.ac.kr/handle/2021.sw.korea/133414
- ISSN
- 1225-1453
- Abstract
- 本稿は、韓国人による最初の日本語探偵小説「杭に立つたメス」の紹介を中心に、この作品と同時代の植民地朝鮮における韓国語․日本語探偵小説との比較考察を通して当作品の特徴と文学史的位置づけを試みる。「探偵小説 杭に立つたメス」は、1929年11月から1930年1月まで『朝鮮地方行政』という京城で発行された日本語雑誌に3回にわたって連載された。作者金三圭に関する確かな情報は、現在のところまだ把握できておらず、更なる調査が必要な状況であるが、1929年11月という発表年度は、従来韓国人が書いた最初の日本語探偵小説と言われてきた金来成の「楕円形の鏡」(『ぷろふいる』1935. 3) より約6年も早く、「杭に立つたメス」は、韓国人における最初の日本語探偵小説と言え、韓国における探偵小説史の見直しを促すに充分に値する資料だと思われる。この作品は、連続殺人事件の発生、謎のスペードのカード、医学知識を駆使した科学的推理、容疑者(警察は語り手である平石を容疑者だと疑う)から犯人(南見)へ、そして表と裏の二つ顔を持つ真犯人(牧田)による真相証しなど、探偵小説としての面白みを備えた作品であり、掲載誌『朝鮮地方行政』の異例且つ大々的な予告文からもその完成度と評価の程が伺える作品である。しかし、「杭に立つたメス」と同時代の韓国語探偵小説とを比較しするとそこには一種の間隙が存在していることが確認できる。朴炳好の「探偵小説 血袈裟」(『鷲山寶林』1920.7~9)から「杭に立つたメス」と同月に発表された丹頂鶴「合鍵」(『新民』1929.11~1931.6、未完)に至る韓国語創作探偵小説の流れと「杭に立つたメス」には明らかな隔たりを見せている。つまり、韓国語探偵小説の流れは、韓国における探偵小説の文法の取得と発展の過程を見せている反面、「民衆啓蒙」と民族的意識の高揚の手段としての探偵小説理解が継承されているが、一方の「杭に立つたメス」は、このような民族色は全く脱色され、単なる「遊戯」の対象としての読物でしかないのである。韓国語探偵小説と比較すると「杭に立つたメス」はその異質性が目立つが、当時の朝鮮における日本語探偵小説と比較するとそこには逆に同質性を見出すことができるのである。両者とも、その作品からは植民地のネイティブやローカル色は全く払拭され、「趣味」や「遊戯」の対象としての読物、探偵小説として書かれ享受されているのである。つまり、純然たる読物としての「杭に立つたメス」が如何にして韓国人によって書き得たのか、この作品を通して見えてくるものは何かといえば、それは一つには植民地朝鮮における「日本語文壇」つまり、在朝日本人の文学活動と朝鮮における日本語文学の享受という状況が浮かび上がり、また、確認することが出来た。1930年代植民地朝鮮で<探偵小説ブーム>が到来する。1929年末、韓国人作家金三圭が書いた「杭に立つたメス」は、30年代の<探偵小説ブーム>を予告するものであり、また、この作品の出現を可能にさせた要因は、1930年代の植民地朝鮮で「民衆啓蒙」や帝国主義に対する「抵抗」の文学としてではなく、探偵小説の「文法」を駆使した「遊戯」の文学としての探偵小説の創作と享受の到来を可能にさせたのだる。
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Collections - College of Liberal Arts > Department of Japanese Language and Literature > 1. Journal Articles
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